大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)10969号 判決

原告 波多野きぬえ

右訴訟代理人弁護士 坪野米男

同 金川琢郎

同 関口保太郎

同 多比羅誠

右坪野訴訟復代理人弁護士 小野誠之

被告 野崎ゆり

<ほか三名>

被告ら訴訟代理人弁護士 山岸文雄

主文

被告高松繁子、同小丹枝登之助は、原告のために、別紙目録記載の土地の持分各四分の一につき所有権移転登記手続をせよ。

原告の被告野崎ゆり、同岩崎任男に対する請求をいずれも却下する。

訴訟費用はこれを二分し、その一は原告の、その余は被告野崎ゆり、同岩崎任男の負担とする。

事実

一  当事者の求める裁判

(原告)

原告と被告野崎、同岩崎との間において、別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)が原告の所有であることを確認する。

被告高松、同小丹枝は、原告のために、本件土地の持分各四分の一につき所有権移転登記手続をせよ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

(被告ら)

原告の請求はいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二  当事者の主張

(請求の原因)

(一)  本件土地を含む山林三反六畝は、原告が家督相続により所有権を取得し昭和四〇年一〇月七日これが所有権移転登記を経由したところ、本件土地につき、同年一〇月一九日売買を原因とする原告から訴外西川栄一への、更に、同年一一月二日売買を原因とする西川から訴外久道重雄への所有権移転登記が経由されている。しかし、右各登記は、原告が財産保全を図るため、西川と相談のうえ架空登記したものであるから、原告が右山林を所有していることに変りはない。

(二)  ところが、本件土地については、その後、同年一一月二九日受付により久道から被告四名に対し売買を原因とする所有権移転登記が経由され(被告らの持分各四分の一)、次いで、被告野崎、同岩崎の持分は同四四年一二月二六日受付で売買を原因として訴外木村秀雄に所有権移転登記が経由されている。

(三)  しかし、被告岩崎、同高松、同小丹枝の登記経由は、被告野崎が税金対策上右三名の名義を借りたまでのもので、実質は被告野崎のための登記であるところ、久道から野崎への登記原因である売買は、原告不知の間に西川と被告が通謀してなした虚偽表示である。

(四)  以上からして、被告野崎は現在登記簿上は所有名義を有していないが、真の所有者と自称しているのは同人であるから、同人との間で本件土地の所有権の帰属を明らかにしない限り、右土地に関する紛争の根本的解決が望めないところ、同被告および岩崎はこれを争っているから、右両名に対する本訴請求は即時確認の利益があるというべきである。

(五)  よって、原告は、所有権に基づき、被告らに対し本訴請求をする。

(答弁)

請求原因事実中

(一)は、本件土地につき原告主張の各登記が経由されていることは認めるが、その余は不知。

(二)は認める。

(三)のうち、被告岩崎、同高松、同小丹枝名義の登記が原告主張のように単に名義だけのものであることは認めるが、その余は否認する。

(四)、(五)は争う。

(抗弁)

(一)  原告はその主張する三反六畝の山林全部の売却を訴外西川栄一に委任し、西川はこれに基づき、右山林中本件土地を除く一反歩を昭和四〇年一一月一〇日訴外保利正子に売却し、次いで、同月中旬本件土地につき被告野崎と代金四〇〇万円で売買契約を結んで売却した。

(二)  仮に西川が本件土地の売買につき原告を代理する権限を有していなかったとしても、保利に対する前記売却につき基本代理権を有していたから、本件売買は権限踰越の代理行為というべきところ、本件土地の所有権移転登記が前記のように原告から西川になされていること、被告野崎は本件売買を不動産取引業者である訴外日本電建株式会社の調査結果に基づいてなしたことからして、同被告において、西川に本件売買についても代理権限があると信じ、かく信じたことに正当な事由があるといえる。

(三)  以上の主張が認められないとしても、原告は同四一年六月中旬西川に対し、本件売買を追認した。

(四)  以上の主張はともかくとしても、原告から西川更に久道への本件土地の所有権移転登記が、原告と西川間で仕組まれた通謀仮装登記であることは原告の自認するところであり、そうだとすると、かかる原告は善意の第三者である被告らに対し、右登記の無効を主張することは許されない。

(抗弁に対する原告の認否)

抗弁事実中

(一)は、保利に対する売買につき西川が原告の代理権を有したことは認めるが、本件売買についての代理権は否認する。

(二)は、被告ら主張の基本代理権は保利に対する売買により消滅しており、被告野崎の善意は否認し、その余は争う。

(三)は否認する。

(四)は争う。

三  証拠≪省略≫

理由

一  被告野崎、同岩崎に対する請求について。

不動産の所有者甲が、乙にその所有権を移転する意思がないのに、乙の承諾を得て、右不動産について甲から乙名義に所有権移転登記を経由したときは、実質において、所有権移転の意思がないのに、他人と通謀して所有権を移転したかのような虚偽仮装の行為をし、これに基づいて虚偽仮装の所有権移転登記を経由した場合となんら異ならないから、民法九四条二項を類推適用して、甲は乙が右不動産の所有権を取得しなかったことをもって善意の第三者に対抗することができないものと解すべきは、最高裁判所の屡次の判例の示すところである。

本件の場合、原告から訴外西川栄一、更に、同久道重雄への所有権移転登記が右判例のいう虚偽仮装登記に該当することは、原告の自認するところであるから、原告は右登記の無効をもって善意の第三者に対抗することはできないところ、被告野崎、同岩崎の本件土地の持分につき、原告主張のように、訴外木村秀雄名義に売買を原因として所有権移転登記が経由されていることは当事者間に争いがなく、これが登記原因についてなんらの反証がない以上、右売買は実際行なわれたものと推認するほかない。以上からすると、木村はいわゆる第三者であるから、同人が善意である限り、原告は同人に対し本件土地の所有を主張することができず、原告請求にかかる被告野崎同岩崎との間で本件土地の所有につき確認の裁判をしたとしても、木村との間の紛争を解決するには直接役に立たず、結局、即時確定の利益はないといわざるをえないから、原告の両被告に対する請求は、不適法として却下すべきである。

二  被告高松、同小丹枝に対する請求について。

(一)  請求原因(一)、(二)の事実は、本件土地に原告主張どおりの登記が経由されていることは当事者間に争いがなく、その余の事実も≪証拠省略≫から認定でき、他にこれを左右すべき証拠はない。

(二)  被告らは、原告は本件土地の売却を西川に一任し、同人はこれに基づいて本件土地を被告野崎に売却した旨主張するが、売却権限についての右主張に沿う≪証拠省略≫は、≪証拠省略≫に照らして採用できず、被告らの表見代理、無権代理の追認の主張も、≪証拠省略≫によると、被告野崎は本件土地を登記簿上の記載どおり訴外久道重雄の所有と信じ、したがって、西川を久道の代理人として取引したことが認定でき、他にこれを左右すべき証拠はないから、被告らの右主張はその前提を欠き、採用できない。

(三)  原告が本件土地の所有権を失ったとする被告らの主張が認められない以上、本件は、一においてすでに言及した虚偽仮装登記と善意の第三者の問題として解決すべきところ、被告高松、同小丹枝の所有名義が同野崎の税金対策上単に登記名義を貸したにすぎないことは、同被告らの自認するところである。そうだとすると、被告高松、同小丹枝は前記判例でいう第三者、すなわち、本件虚偽仮装の登記につき新たに利害関係を結んだ者ということはできないから、原告は右登記の無効をもって被告両名に対抗することができ、原告の所有権に基づく両名に対する所有権移転登記請求は理由があるから、認容すべきである。

よって、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 宮崎啓一)

<以下省略>

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